(11)第五章 自然界の再生医療 1

10おばあちゃんの知恵袋、自然食品ナンバーワン、何百年も腐らない梅の実

 

「梅エキス」って?

 冒頭でお話しした、夢に出てくるおばあちゃんがぐつぐつ煮て造る「梅エキス」。これは、生物界の営みである“発酵”を生かした技術です。梅はバラ科の果樹で、原産地は中国江南地方ですが、日本にも大分、宮崎、山梨などに元々自生しており野生の原種が確認されています。東洋で最古の歴史ある果樹として、中国最古の薬物書「新農本草経」、日本の「本草学」にもとりあげられています。 

 18世紀初頭の日本の百科事典にあたる書物によると、豊後産の梅は大きくて、果肉が厚く味も良く、それを貼れば悪性のおできも治るといった記述も確認されています。古くから外用にも使われていた梅干し。梅そのものの強い殺菌・抗菌作用で体の外側からも力を発揮します。気になる外気のよごれやほこり、細菌等からお肌を守ります。また自分の体から発する臭いや、吹き出物、水虫にもお勧めです。

 

 梅エキスは、青梅の成分を濃縮したものです。青梅の絞り汁を長時間煮つめて作ったエキスです。効能の範囲が広く、対象を選ばないので家庭の常備薬として古来より重宝されてきました。おばあちゃんが作ってくれた記憶のある方も多いのではないでしょうか? 

 梅エキスのPHは1.4で、他の食中毒を起こす菌より強いO157の菌が耐えうる限度のPH2.5を超えています。(数値が低いほど酸性が強い)それほど強力な殺菌作用を持ちながら穏やかに働くという特長があり、敏感な肌には最適です。そして、梅エキスは、各種有機酸によるクエン酸サイクルによって代謝を高め、血液循環を促し、生命活力を増します。さらに、梅エキスに含まれるムメフラールは、血流を整え老廃物が排出されることによって、シミや肌荒れの原因となる乾燥等のトラブルを防ぎます。 

 このムメフラールという成分は、クエン酸と糖の一部が熱で結合してできたもので、梅の実にはなく、梅エキスにしか存在しません。梅エキスにはその他未知の成分が多く含まれていて、それらの相乗効果で多くの効能があると考えられています。それらの数値化できない成分の効果には、三千年以上の間に数えきれないほどの臨床結果により言い伝えられる体験統計があり、それが一番の信頼となっています。

 

 おばあちゃんの知恵袋、日本の自然食品ではナンバーワンの梅エキス。塗り薬にも、お腹が痛いときにも、これ一本で万能薬になります。特に、昭和の初めに、国が貧しい国民の為に奨励したと云います。梅エキスは、日本特有の万能薬であり、大切にこれからも使って行きたいものです。

 

腐らない梅の実、その効果

 大分県の大山町は、梅を植えてハワイに行こうという、地域活性の取り組みを行いました。農業が潤う方法として、加工品を作り、“一村一品”を提唱し始めたのもここ大山町の梅が最初です。

 

 この大山町の生産者の直売場の展示室に何百年も前に作られた梅干しが保存されています。厳密には腐らないと云うよりも、発酵状態を保っているといった感じで、生きたり、死んだりの繰り返しが、その一つの梅の実で繰り返されている感じです。お醤油、お酒、ワインや、味噌に至るまで、発酵食品は本来、熟成発酵する為、常温で、保存でき、保存料がいらないものです。味や風味が、発酵によって変わってしまったり、旨み成分等余分なものを添加している場合は、保存料を使用したり、冷蔵庫保存が必要でしょう。しかし、自然のまま発酵されているより自然な人間の手を加えていないものは熟成されます。発酵が熟成されるという事を一言で云うと、より穏やかな状態になるという事です。作りたての様な尖った感じは無くなり優しくなります。腐敗菌が減って常在菌が増えるため、効果として、前述にあるように、殺菌、抗菌、抗真菌作用が働きます。また、抗酸化力が強いので、炎症を起こしてしまったアトピー肌には最適です。鎮静作用や、鎮痛作用もあるので、せっけんの中に梅エキスを混ぜると、泡立てても刺激が少なく、皮膚の傷が沁みる感じがしないのです。これは良い効果が得られます。しっかりと洗っても沁みないと云う事は、しっかりと皮膚を整えることが出来るという事です。

 

Mao撮影:自作の梅エキス

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